イタリア編 〜


1997年 2月18日(火) オルヴィエート:晴れ ローマ晴れ

8時頃起きて身支度をするが、今日何をするか全く決めていない。
時刻表を見るとシチリアに明朝着く夜行があったのでそれに乗ることにする。
夕方にローマに着けばいいので、それまではフリーだ。
オルヴィエートを楽しもうと思う。

とりあえず両替。昨日郵便局のレートが12.95だったのでまあまあ良いなと思って替えようとしたら時間が遅くてダメだった。ところが今日は13.05になっていたツイている。

バールで昼食をとり、街をぶらぶらする。
ふと、昨日のおじさんに教えてもらった洞窟のことが頭をよぎる。見てみたい。

行ってみたが、開場は11時からだった。
それまでもっと街を知りたいと思い、今度は北側へ行ってみることにした。

東西に街を横切るメインストリートから一本入ってしばらくすると景色がぱっと開ける。
ここが北側の壁。すごくシンプルだ。

オルヴィエートの街が、麓に影を落としている。
ここにいると地表の動きを感じる。
北に来れば背後からの光で影ができ、西に行けば日没が見られるのだ。
当然のことなのだが、そんな現象のひとつひとつに僕は感動した。

壁沿いにはいくつもベンチがあり、子供の遊具があり、並木が続いている。
犬が吠えたり鳥が鳴いたりしている。

僕は街の南へ行って城壁沿いに歩いたり、トラットリアの値段を見比べたりして時間をあけたが、30分経っても洞窟の入口は開かない。
どうも今日は閉まっているようだ。

仕方がないので、これは次に来た時の楽しみにとっておくことにして、昼食にする。
昨日の店でカルボナーラとほうれん草。
ほうれん草はイマイチだったがスパゲティーは相変わらず美味い。

昨日買ったワインが美味かったので、何本か買っていこうと思ったが、1時から2時まで昼休み。仕方なく僕は30分ほどドゥオーモ脇で食休みをとることにした。

日差しが強く、まるで初夏のようだ。
2時になってハーフボトルのワインを4本買い、バスに乗ってケーブルカー駅へ。

昨日サン・パトリツィオ井戸の周りから見下ろした風景の中へ、ケーブルカーは降りていく。

オルヴィエートを離れるのはすごく残念だし、シチリアへ行くのはちょっと怖い。
でも仕方ない。僕は旅人なのだ。

ローマ行きインターシティーには2等座席がなく、親切な国鉄のおじさんの計らいで初めて1等に乗る。座席には折り畳みのテーブルが付いていて、椅子がでかい。

24日ぶりに戻ったローマの街は、やはり騒々しく落ち着かない。
車はびゅんびゅん飛ばしているし、怪しい人がたくさんいる。
時刻は午後4時。夜行列車まで5時間以上ある。

僕は地下鉄に乗って、ピラーミデにあるキーツの墓に行ってみることにした。

治安の悪いローマの地下鉄に乗るのは嫌だけど、これから先はもっと危険と困難が予想されるシチリアに行くのだ。これしきでビビっていたら何もできない。

テルミニ駅に荷物を預け、B線に乗り込む。意外にも若いカップルや子供連れなどが多いが、中にはあからさまに「マトモじゃない」人もいる。

ピラーミデ駅から地上に出ると、例の白いピラミッドがどんと建っている。
その後ろが墓地なのだが、高い塀に囲まれていて入口がどこなのか分かるまでに結構かかった。

すごく猫の多い墓地だ。「数」と言うより「量」という感じ。
綺麗なのやぼろぼろの縫いぐるみみたいなのがたくさんうろついている。
ジューデッカ島より断然多い。

墓地の管理人に訊いてキーツの墓を探す。
別にその場所に立て札が立っているわけではないのだが、すぐに見つかった。

英詩の先生が言っていた通り、墓標には竪琴の彫刻と"Young English poet"という文字があるだけで、キーツの名はない。

隣の墓標はキーツの友人と書いてあるだけだ。

墓はシロツメクサ(のような草)に覆われ、いくつかの花が捧げられている。
墓の前には猫が座り、僕を見上げている。きっと何かもらえると思っているのだろう。

時は夕暮れで、墓の背後にそびえる白いピラミッドがやけに大きく感じる。
5時になって閉門となった。
ぎりぎりのタイミングで中に入れなかったハンサムな韓国人バックパッカーに塀の隙間からキーツの墓の場所を教え、彼に頼まれてピラーミデをバックに写真を撮ってあげた。

彼は韓国語版「地球の歩き方」を持っていた。
紙絵からレイアウトまで日本のものとソックリ。

テルミニに戻る地下鉄の中で、南米人らしい二人組がギターと笛のデュオを始めた。

駅についてもまだ5時過ぎで、僕はサンタ・マリア・マッジョーレ教会までぶらぶらと散歩し、テルミニ駅のマクドナルドで日記をつけた。
他に安く座れるところがなかったのだ。

イタリア到着直後によった安食堂(Osteria)で腹ごしらえ。
アッシジの二人によると、ここは「地球の歩き方」に載っていたらしい。
だから日本人が多いのか。でも1万5千リラでこれだけのものを出す店は、少なくともローマではここ一軒だけだと思う。
カネロニもヴェネツィア風レバーソテーも美味かった。

発車まで別のマックで時間を潰し、列車に乗る。

クシェットは中段。枕カバーとシーツ兼ブランケットは不織布でできた使い捨て。
僕は人のいない時を見計らってジャージに着替え、貴重品を全て身につけた。

同室の男たちはすぐに知り合って廊下で煙草を吸いながら楽しげに話している。
帰郷するのだろうか。

すごく背の高い海兵が退屈そうに拳でドアをこつこつと叩いている。

やがて列車は走り出し、僕は眠りに落ちた。
明日、目が覚めたらシチリア島だ。


オルヴィエートの街は、四方が絶壁の城砦都市。
全ては法皇を守るため。


近所のワイン屋さん。

戸口に立つ老紳士の、
鮮やかなストールがイタリアらしい。

左端の看板には『Hotel Duomo』の案内が。


奥が、同じワイン屋さん。
この大きい影はドゥオーモ(大聖堂)です。


オルヴィエートのワインは
日本ではあんまり売ってないけど
本当に美味しいですよ!


左がキーツの墓。
最初のローマ写真と似てますが、
猫がこっちを向いています。



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