イギリス編 〜


1999年9月16日(木)
ストラッドフォード:曇り ロンドン:雨のち晴れ


部屋が空いていたので、他のベッドからブランケットを借りて2重にしたので、とても暖かくぐっすり眠れた。

この時期は季節の変わり目で、夏の寝具のままな事が多かった。もちろんヒーターは入っていない。それできっと体調を崩したのだ。
薄い寝袋はあっても良かったかも知れない。

空は曇っていて、細かい雨も降っているようだ。
朝9時のバスに乗ることにして、僕はゆっくりと朝食を取る。

バス停にはいくら待ってもバスが現れない。
こんな事じゃないかとは思っていた。

メガネのオーストラリア人が現れた。彼と一緒にバスを待つ。
転職の合い間に、6ヶ月も旅をするんだそうだ。

「夏はもう行っちゃったみたいだね。」と彼は言った。

そう、そうなんだ。
僕が今朝から思っていたことは。

季節は巡る。今、ここには確かに秋が来ている。

僕もロンドンに戻り、世界中に散らばっていた学生たちもそれぞれの場所に帰って行くのだ。いつかスペインでやったようにベンチでギターでも鳴らして夏の終わりを惜しみたいような気分だが、雨足が強くなってきた。
僕は防水ジャケットだが、彼はフリース。
朝だっていうのにどんより暗く、バスは永遠にやって来ないんじゃないかとさえ思える。
大きい紙とペンがあったらヒッチハイクでもしたいが、こんなずぶ濡れの僕たちを乗せてくれる車はないだろう。

9時40分ころ、バスはやって来た。

僕たちはコーチステーションの屋根のある待合室で雨宿り。

やがて僕の乗る10時25分発ロンドン・ヴィクトリア駅行きのナショナル・エクスプレス・コーチが現れ、僕らは握手をして別れた。
座席に沈み込むと、安心と暖かさで僕はすぐ眠りに落ちた。
長かった旅が終わろうとしている。

目を覚ましてしばらくバスはハイウェイを進み、ロンドン市内に入る。
アールズコートの駅前で、16歳の時にコーラのでかさに驚いたバーガーキングはまだあった。とても懐かしい。

テムズ河の向こうに、バタシーパワーステーションの4本の煙突が見える。
ロンドンに戻ってきたのである。

ヴィクトリア・コーチステーションでバスを降りる。
地下鉄でハイストリート・ケンジントン駅へ。ロンドンに着いた日に上った階段から外に出て、Holland House YHへ。

何だか何年も昔にここへ来たみたいな気がする。全ては、ほんの2週間の出来事であったのに。

ビールとスープの缶詰を買った。ビールは冷蔵庫へ。スープは温めて腹の中へ。

与えられた71番のベッドは何と唯一2段じゃないシングルベッド。しかも部屋の一番奥のベストな場所だ。

気分良く散歩にでかけ、チキン&チップスを食べていると突然天の底が抜けたような大雨が降った。皆、さすがに慌てている。
しばらくすると雨は嘘のようにやみ、日が差してきた。
まだ夏の名残のある日であった。

細々(こまごま)とした買い物をする。
明日着るTシャツを、マークス&スペンサーで買う。
「Master of the game」のペーパーバックを買う。
ここケンジントンは、便利だが店がお上品で面白味には欠ける。

YHでビールを飲んでいると、日本人バックパッカーに話しかけられた。スコットランドを中心にまわってきたと言う。

現地でたまたま一緒だったというもう一人も交え、3人でビールを飲んだ。グラスゴーは特徴がなさそうで大きい街に思えて敬遠していたが、話を聞くと面白そうだ。

ひどく眠いので、途中で退席して寝た。

夜中トイレ起きた時、うっかり部屋のカギを中に置いてきてしまった。
ここはオートロックで、各部屋の宿泊者以外入れない造りになっている。カウンターに居たガードマンに空けてくれるよう頼むと、
「今日は満室でカギは全部で払っていて、予備も無い。ノックして誰かに開けてもらうしかないね。」と言い放つ。

そうすると、いかついアフリカ系宿泊者が眠そうに開けてくれた。
本当に申し訳ない。深夜1時の出来事であった。


この日も写真を撮りませんでした。

これは、16歳の夏。
大英博物館の正面入口から
外に向けて撮ったもの。
向かいに見える建物に入っている
「The Scotch house」という店で
ハリス・ツイードのジャケットを買ったばかり。



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