イタリア編 〜


1997年 2月15日(土) ボローニャ:曇り フィレンツェ:雨 アッシジ:雨/晴れ/雨

今日に限ってあのベルが鳴らず、寝過ごした。
急いで朝食をとって洗濯物をたたみ、ベッドを空ける。

洗濯していてここ数日Lottoのジャージだったのだが、久々にジーンズを穿いた。
一週間過ごしたボローニャのYHとも、これにてお別れ。

9:42フィレンツェ行きにぎりぎり間に合い、飛び乗る。
あれほど「Non Fmale」と言ったのに喫煙車で凄く混んでおり、予約した僕の席には
おばさんがドッカリと腰をおろしていた。

フィレンツェは雨。
僕はあまりにも長く雨を見なかったので(すぐ霧になる)、雨というものの存在をすっかり忘れていた。

フィレンツェに1泊するつもりでいたが、アッシジ行きの列車は朝6時と昼の11時にしか無く、ここも雨だし24時間待つのもいやなので、僕は20分後の11:15フォリーニョ行きに乗る事にして、駅でサンドイッチを買った。 やはりフィレンツェは日本人が多い。

列車は雨の中を動き出した。
向かいに座ったおじさんは列車郵便職員で、いろいろ話してくれた。
僕が本を読んでいたら、「日本語は縦書きなんだな」と言って驚いていた。

僕がイタリア国鉄の地図を広げて見ていたら、日本人の女の子が二人やって来て
「それ、見せてもらえません?」と言うので貸してあげた。僕たちは地図を広げて話す。

このあと二人はローマに行って、エジプトを目指すらしい。

雨は一度すごく激しく降ったが、遠くに雨雲の端が見えてやがてやみ、明るくなった。
フィレンツェも昼過ぎには晴れたんじゃないかと思う。

このおじさんはとにかく親切と言うか人なつっこく、2時間読書どころではなかった。
雨は激しく降ったり途切れたりを繰り返していた。

アッシジ駅に着く。
夕方にローマへ行くさっきの二人と一緒に街を歩く事になった。

丘の上の街なので、僕は駅前で先に宿を取り、3人分の荷物も部屋に置かせてもらった。

話しているうちに、驚くべき事が分かった。
僕がさっきからいつかどこかで見た事があるなと思っていた一人は、やはり某企業の
就職面接で僕の前に座っていた人だったのだ。
一緒に受けた友人の印象に強く残っており、彼が翌日その話をするので覚えていたのだ。

全く信じられない。
この広い世界で、あんな特殊な状況で会って、もっと特殊な状況で再会するなんて。
彼女も凄く驚いていた。 この春からは同業者だ。お仕事の席で、また会う事があるかも知れない。

アッシジは素敵なところだ。
街中が白と薄紅色の大理石・煉瓦で統一されていて、丘の坂道に沿って石畳の道が上り下りする。

迷路のような街並みはシエナとよく似ているが、アッシジの方が昔らしさを良く残していて静かだ。

雨雲は去り、雲の切れ間から初春のような日差しが眼下の街に鮮やかな光の帯を落としている。

道行く人には、僧服の男やシスターが目立つ。
見晴らしの良い広場や石畳の台が点在する。
雨上がりの匂いに町中が包まれている。

聖フランチェスコ教会は上下二層になっており、地下には聖フランチェスコの墓があった。

高い位置に石棺があり、それを回廊が取り囲んでいる。
上の教会はジォットによるフレスコ画『聖フランチェスコの生涯』で埋め尽くされており、僕はパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂を思い出した。

イタリアという国が、一つ一つの街がつながって出来ている事を実感した。
美術館ではないのだ。

日が暮れて、再び雨が降り出した。どんどん激しくなっていく。
サンタ・クローチェ教会を出た僕たちは、濡れながらバス停を目指した。

ところが、アッシジの街はこういう時に分かりにくく、やっとバス停を発見した時には
すっかりずぶ濡れになっていた。
僕の部屋で二人にバスタオルを貸した。
3人で駅まで歩き、彼女たちの乗るローマ行きを待つ。
夕闇の中、激しく音を立てて降る雨。排水溝はごうごうと音を流れる水を飲み込んでいる。

僕たちは、これからの旅について話しあった。

やがて時間が来て、ローマ行きインターシティが到着した。
ドアが閉まって、僕は曇った窓からかすかに見える2人に手を振った。

列車が去った後で、僕は何だかずっと一緒にいた友達を送り出したような気分になった。

雨はまだ激しく降っていて、田舎町アッシジの夕闇は深かった。
夕食をとりに出掛けたら、またずぶ濡れ。 でも部屋は暖かく、よく眠った。


思わぬ所で再会したHさん。
世界は広いようで、
驚くほど狭い。

同業者ながらもう何年もお会いできず、
この写真掲載のお許しを得るために久々に連絡した
(快諾してくださった)。
お元気そうで何より。

アッシジは丘の上の街なので、
眼下には麓の景色が見える。


聖フランチェスコ教会近くの広場から
麓の街と広々とした空を見てみると、
雲の切れ間からカーテンのような
光の帯が降り注いでいた。

まるで神様が下界を覗いているかのようだ。

意外に上手く写真に撮れて良かった。



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