2002年初夏、某県に中高生キャンプの下見に行った。 両側に二つのキャンプ場を持つ小高い山を、石のトンネルが貫いている。 ふと見ると、トンネルの中には鉄のレールを支えていた枕木や電灯の 跡があるではないか。 少し離れたところを、トンネルと平行してJRの線路が走っている。 きっと数十年前に輸送が活発化して単線では間に合わなくなり、上下の本線を 作った際にこっちの旧い線路は見捨てられたのだろう。 「ここに列車が通っていたんだ!」 そう思うと居ても立ってもいられなくなり、僕たちはトンネルを探検してみる 事にした。 キャンプ場や周辺の調査など、やらなければならない事は山ほどあったが、 大きく口を開ける苔むしたトンネルと、その先に広がる薄暗い闇の魅力には どうしても勝てなかったのだ。 |
まだ入り口で「どうしよっか?」と考えている状態。 懐中電灯や軍手、カッパなどは遠い駐車場にある。 靴だって普通のスニーカーだ。 この日は別に洞窟探検するつもりで 家を出てきたわけではないのだ。 |
かつてここを列車が通っていたことを物語る枕木。 さすがに鉄は貴重なのか、レールそのものは 残っていなかった。 現在、トンネル内には水が染み出して流れている。 |
恐る恐る入ってみる隊員S。 光は入り口から差す日光と、彼がたまたま持っていた 小さいヘッドランプのみ。 |
隊員H。 どんどん入り口の明かりが小さくなってゆく。 カーブが多く、出口は見えない。 長さも分からない。 |
【注】この写真はCGで明るく調整してあります。 |
水を避けながら、トンネルの端っこを歩く。 右側がダメになったら注意して反対側に渡り、 左側を歩く。 たった一つの小さいライトしかないので、それを 挟み込みように隊列を組み、川を渡るときは 足元だけを照らす。 |
【注】この写真はCGで明るく調整してあります。 |
約30分後。 ようやく出口が見えてきた。 喜ぶ隊員Tの後姿。 |
出口付近は完全に川。 トンネル縁の僅かな陸地にしがみ付くようにして 出口を目指す。 |
ようやく脱出。外の世界へ。 |
トンネルの反対側。 初夏の日差しが眩しい。 |
そのまま歩きつづける。 中央の奥に、かつての送電線を支えた鉄柱の アーチが見える。 |
枕木。 トンネルを抜けると町だった。 少し離れた場所を平行して走る現役の線路の 先にはJR駅がある。この廃線は民家裏で消えていた。 |