イタリア編 〜


    2月25日(火)ローマ:曇り

バチカン美術館へ行く。
ローマに来るのは2度目、入ろうとしたのはこれで3度目なのにいつも時間ギリギリで入れなかったので、今回は朝イチで行く。
サンタ・マリア・マッジョーレ教会を横切り、エマヌエーレU世記念堂の前を通り、テヴェレ河を渡る。
途中、適当に寄ったバールのハンバーガー(塩味ハンバーグにほうれん草)が美味かった。
美術館にはすでに行列ができており、サン・パトリツィオの井戸を思い出す二重螺旋の重々しい階段を上ってチケットを買い、入場する。
まずはシスティーナ礼拝堂を目指す。
修学旅行や遠足の子供、日本人団体がやたら多くて凄く歩きづらい。
細い廊下や階段を何度も上り下りして、汗だくになってやっと着いた。
てっきり奥の壁に『最後の審判』があるのだとばかり思っていたが、実際は入口の壁で振り返って見ることになる。
礼拝堂そのものは予想より小さかったが、フレスコ画自体はやはり素晴らしかった。躍動感があり、色彩があり、ドラマがあり、圧倒的な迫力と宗教的説得力がある。
天井一面のフレスコ画もまた凄い。例の『アダムの創造』から『楽園追放』まで。こんな事ならローマのガイドブックを買ってきても良かった。

ここが、僕の旅のゴールである。
ヨーロッパ一周のゴールがグリニッジ天文台であったように、イタリア一周のゴールはここ、システィーナ礼拝堂と決める。

ずいぶん長い旅だった。
何十もの街と何百もの絵画と、何千と交わした「Grazie」。
何千kmもの移動、暑い日。寒い日。
美味かった食事。
うんざりしたこと。思わず涙が出そうになるほど感激したこと。
素晴らしい出会いの数々。
この長い旅の地を、イタリアにして本当に良かった。
これほど魅力に溢れ、飽きない国(悪い意味も含めて)は他にちょっと無いだろう。
いよいよあさって、僕はここを後にする。
とても不思議な気分だ。
住み慣れた日本に帰るのに、僕はまるで「日本に行く」ような気持ちになっている。
でも、どこが本当の居場所なのかと聞かれると良く分からない。
大学3年・4年と2年間住んだ部屋のような気もするし、オルヴィエート、ボローニャのYH、シチリア、育った実家、これから住む部屋。どこでもいい。
ヨーロッパ一周を終えた時に達した結論を、僕は再確認する。
人生は、生活は、旅なのだ。
すごくいい言葉だ。これから先の長い人生を、苦しいことや思い通りに行かないことがあっても楽しく有意義に過ごせそうな気がする。
何にせよ、素晴らしい旅だった。出発した時はあんなに疲れていて気が乗らなかったのがウソのようだ。

バチカン美術館には、超A級の作品が目地押し。倫理の教科書に載っていたアリストテレスとプラトンの絵『アテネの学堂』の隅には、ラファエロの自画像があるはずなのだが修復中で見られなかった。
ダ・ヴィンチの聖ヒエロニムスは未完成ながら骨格を意識して描いているのが良く分かった。
ベルヴェデーレのトルソは、説明がないので自信がないが、確かミケランジェロが「この像こそ我が師」とベタ誉めした像だ。
ラオコーンは、僕がウッフィツィ美術館の廊下で見て勝手に感激していたのだが、多分こっちがオリジナル。

2時間で見たいものを全てまわったのでクタクタだ。
それでもまだまだ見落としがあると思うので、ここはいつかまた来てみたいと思う。

出口はサン・ピエトロ広場だったので、例の柱廊の柱が全て一本に見える位置にたってみる。この度の始めに来た時は工事中だったのだが、本当に一本に見えた。

地下鉄に乗ってスペイン広場で降り、僕のお気に入りの『Andrew's ties』で父と兄とバンドの面々にネクタイを買う。他にも自分に4本買った。計12本で27万リラ。安い割に品質が良いのが素晴らしい。

明日は、いろんな人達へ土産を買う一日にするつもり。
今回の出発前には、3人の友人に引っ越しを手伝ってもらったので、まずはそのお礼を。
おもちゃ好きのタダシ君には何かイタリアらしい物を。バスケ好きのタクマ君にはウェアを。高校生の時一緒にイタリアを旅した河合君には、彼の大好きなフェラーリのミニカーを買おうと思う。
あのハードな引っ越しのお礼が焼肉だけでは恨まれそうだ。河合君に至っては昼飯しかご馳走していない。

昼食をとる。太めのパスタ・リングイーネのニンニク・唐辛子オリーブオイル和え。店の構えが安くて美味そうなので入ったが、やはり大当たり。2皿目は生まれて初めて食べる牛の脳。まるで深い味わいの白子のようで、とろけるような舌触り。レモンを搾って食べるので、生臭さや臓物臭さは全然しない。
バター和えなのにさっぱりしていて、ペロッと食べてしまった。もっと食べたい。
この旅を通じて、初めて赤ワインを飲む。イタリアの白はすっきり辛口で美味いのでついつい赤を敬遠していたが、これも美味い。

ホテルに戻ってネクタイを仕分けたり日記をつけたりする。
商店も昼休みだし行くべき所も特にない。何もしない時間も良いものだ。

洗濯物を干して夕食。

昼の店に行って、ボンゴレと豚の腎臓ニンニクきのこ炒めを食べる。
これまた美味いが、牛の脳の味が忘れられないので明日また食べたい。

いよいよあさっては出発だ。
耳栓をしてぐっすり眠る。

この写真、実は17歳の時のものです。

今回バチカンでは一枚も撮らなかったもので…。

何でスーツ?

多分出発寸前に『ローマの休日』を観て
グレゴリー・ペックになりきっているんでしょう。
どうか見逃してください。


同じく高2の時の写真。

聖ピエトロ寺院の上から広場を見下ろしたところ。

上の写真でも見える聖人たちの
後ろ姿が見えますね。

これはドームの頂上から
バチカン市国全体を見下ろしたところ。

安かったんでAgfa社のフィルムを
山ほど買っていったんですが、
赤色はピンクベージュに、
緑色はエメラルドっぽくなります。

嫌いじゃないですけど。



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