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1997年 1月 23日(木)
東京:?
ソウル:曇
ローマ:?
朝4時半に起床した。
おとといから東京を襲っている強い寒波の影響で、ひどく寒い。
荷物は一応まとめてあったので、僕は布団をたたみ、階下へ降りた。
コーヒーを淹れる時間はない。
それでも何か飲まなければ体が動かないほど寒いので、缶コーヒーをマグカップに注いで電子レンジで暖めた。
予定より一枚多く、アウトドア用防寒シャツをザックに入れた。
二日前に短く刈り込んだ頭が寒い。
ダウンジャケットに防寒靴、手袋、マフラーという格好で駅へ向かって歩く。
ひどく静かで暗く、天気さえもよく分からない。
予定通り空港に着き、最後の日本円で買い物。ついでにサンドイッチで朝食をとった。
冬の空港は空いており、全てがスムース。
ここへ来て、初めての一人旅を実感する。
何か思う浮かぶ度、感じる度、話しかける相手がいないのだ。
開放感半分。不安感半分。
でも、今回は一人。自分で決めたことなのだ。
いきなり搭乗口を間違える。なんとDATEとGATEを間違え、チケットの「23,Jan.」という日付を見て23番ゲートだと思ったのだ。
疲れているようだ。
トランジット地のソウルでは航空会社側の記載ミスがあり、2度ハラハラした。
冬のソウルはいつにも増して寒々しく、気温はなんとマイナス3℃という事だ。
ソウル−ローマ間は長時間の飛行だったが短く感じた。
かえって、もっとイタリアの予備知識を入れる時間がほしいくらいだった。
レオナルド・ダ・ヴィンチ空港からテルミニ駅までは、5年前はなかった国鉄が開通していた。
17歳の僕たちはバス乗り場が分からず、いきなり怪しい客引きの男にパスポートを取られそうになったのを思い出した。
いよいよ、ここからは全くの一人。誰も頼れない。外は夜。
僕は巨大なシートに身を沈め、郊外からローマ市内に移るにつれて巨大な石造りの建物が増えていく様を車窓から眺めていた。
ローマだ。
気温は初春のようで、ダウンジャケットが暑く感じる。
テルミニ駅周辺には若者からお年寄りまで雑多な人々で賑わってる。
話し声、車の騒音、遠いパトカーのサイレン。
ここはローマだ。
案内図では駅の真ん前にあるはずのホテルが見つからない。
美しい建物や人混み、猛スピードの車にドキドキしながら、初めての不安感を味わう。
ホテルは図と裏腹にかなり入り組んだ所にあり、見つけられたのは偶然と言ってよかった。
エレベーターはガタガタだったが部屋はとてもきれいで、いらないのにTVまであった。
僕は靴を脱ぎ捨て、ベッドに潜り込んだが、気力を振り絞って立ち上がり、洗濯とシャワーを済ませて、深い深い眠りに落ちた。
訳の分からないオムニバス映画のような夢を見た。
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