1994年 9月 2日(金) ベルリン:曇 プラハ:曇のち雨

7時に起床。慣れたせいか南下したせいか、思いのほか寒くはない。
部屋いっぱいに干した洗濯物を取り込んで出発。

今日向かうチェコは中欧で、西欧の列車乗り放題のユーレイルパスも効かない上にヴィザが必要だ。
まずはチェコ大使館へ向かう。

バスは通学する子供達でいっぱい。皆、私服にリュック姿だ。僕も大きいザックを抱えてつらい体勢だったが、やがてバスは学校前に着き、皆がワイワイ降りていくと車内はウソの様に静かになった。

昨日のブランデンブルグ門でバスを降り、チェコ大使館まで歩き、ヴィザを請求する。
50マルク(3000円)もかかって貧乏な僕には痛かったが、5分で発給してくれたのは有り難かった。
そこからまた歩いてフリードリッヒ駅へ。もう暑いくらいだ。ドイツで愛飲している缶紅茶、冷たい
「LIPTONICE」を飲んで一息。

プラハまでの運賃を払いたかったが、どこも取り合ってくれないので、仕方なくそのまま乗車することにした。
ハンガリーのブダペスト行き列車は少々遅れて到着。コンパートメントは旅行者の女の子二人連れと同室だ。

ドレスデンを出ると、入国管理官がやって来る。ヴィザの半券を切り、スタンプを押して通過したが、まだ運賃を払っていないのでいつ言われるかとヒヤヒヤする。ドアの前にはグリーンの軍服の男が二人立っている。

女の子達がパンを食べ始めたので、僕達も昨日買ったチーズとテリーヌで自作のサンドイッチを作り、昼食。

窓の外、山の上には石の壁や古い城砦が見える。切り立った絶壁。チェコの田舎風景。
家々は童話の絵本で見たようなメルヘンチックな形になっていく。

少し眠る。やがて検札が来て、18マルクの運賃を払う。

  


中央大通り。奥は国立博物館。
その裏が中央駅だ。

午後3時プラハ着。
地下鉄で中央駅を目指すが、券売機が全部壊れている。林檎ジュースを買ってジャストのお金を入れても動かない。
仕方なく無賃乗車した。

中央駅は何層にも重なった大きい駅だ。
とりあえずカフェでコーヒーを求め、一服。プラハはホテル難で有名なので荷物をコインロッカーに預け、腰を据えて安宿を探すことにする。コインが足りず、強引に二人の荷物を入れる。

料金は10コルナ(40円)。さっきのコーヒーも10コルナ。安くて助かるなあ。

国立博物館から延びる大通りで宿探し。超高級ホテルばかり。ためしに一軒値段を聞いてみると、ツインで3000コルナ(12000円)だそうだ。冗談じゃない。対象によって物価がバラバラだ。

大通りから広場へ。大聖堂や時計搭など、美しい建物が並ぶ。ここプラハはかつて「百搭の街」と呼ばれたところ。大学の図書館で偶然その言葉を知り、訪れたくなったのだ。

ホテルが見つからないまま雨が降り始め、惨めな気持ちで大河にぶつかる。かのモルダウ河だ。

泣く泣く地下鉄に乗って中央駅に戻る。今夜は久々に駅で野宿でもするか。
ところが、ダメ元で立ち寄った駅のインフォメーションでユースホステルを教えてもらう。一泊800円。
安い!なんとYHは駅舎の隣にあった。

部屋は6人用のドミトリーで、屋根裏部屋。なかなか快適そうだ。明かり取りの天窓には、夕方になって強まり始めた雨が音を立てている。部屋ではカナダ始め各国のゴツイ旅人達が話していて、僕達を歓迎してくれた。


丘の上から街を見下ろす。中央に時計搭が見える。

  

洗濯をして駅に戻り、あさって早朝のウィーン行き列車を予約した。
まるで体育館のように広い駅の食堂でビーフカツレツとビールの食事。
カツレツは冷えていてあまり美味くなかったが、全部で90コルナ(360円)だ。贅沢は言うまい。付け合せのポテトは美味しかった。

食堂はあまりに巨大。窓の外は駅正面で、外の様子が見える。反対の窓はいきなりホームで、列車が行き来している。天井にはかつての栄華を思わせるフレスコ画や彫刻。

ここはホテル以外なんでも安い。ホットドッグ40円、ハンバーガー60円くらい。街の雰囲気も近代化されておらず中世の面影があり、宿さえYHなら極めていい街だ。

駅の放送はチャイムの代わりに「モルダウ」の荘厳な響き。どこかのカフェではクイーンのボヘミアン・ラプソディーを聴いた。

だいぶ南に来たので、プラハは少し暖かく感じた。でも、冬はきっと寒いのだろう。

 

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