イタリア編 〜


    2月24日(月)ナポリ:曇り ポンペイ:晴れ

身支度をして2日分の宿泊費を払い、3人でナポリ中央駅まで歩く。

偶然会えて、本当に良かった。僕たちは握手をして別れる。2人はローマに向かい、僕はポンペイの遺跡を目指す。
列車は地下から出る。初日だったらこの駅の地下は怖かったかも知れないが、もう慣れた。
40分かかってヴィッラ・デイ・ミステリ駅に着く。ミステリーハウスというこの駅の名は、火山灰の下から発掘されたものの何の用途に使っていたか分からない家からついた。
朝食を買い、パンを囓りながらポンペイ遺跡まで歩いた。

ヴェスーヴィオ火山の噴火によって1,500年も埋もれていた街が発掘されてまだそれほど経っていない。
遺跡はさながら今も人の住む街のようで、確かにこれがそんな大昔のものだとは思えない。
街は巨大で、フォロ・ロマーノのように全体を見渡すことも出来ない。
市街の壁が殆ど壊れていないのだ。
家の中の壁にはところどころ壁画が残っていて、床にはモザイクのあるものもある。
神殿・劇場もその姿をとどめ、商家は当時の生活を偲ばせる。
通りには、馬車のものであろうか轍がのこっており、道の中央には、なぜか馬車で通るには明らかに邪魔な大きい石が点々と置いてある。
犬がたくさん歩いていて、日差しが強い。

『JoJoの奇妙な冒険』で見た犬のモザイクも見た。これは鉄柵で保護されていて家の中には入れなかった。
1日コースを2時間で周り、汗だくだ。

駅でビールを飲み、今度はヴィッラ・デイ・ミステリを見に行く。
松林の坂を、汗を拭きふき歩いてやっと着いた。
邸宅内は暗く、あまりにも完全に残っているので遺跡にいる気は全くしない。博物館か古い城にいるようだ。
暗い小さな部屋の中央にガラスケースがあり、溶岩から発掘された遺体が入っていて怖かった。
ポンペイ遺跡は確かに凄いのだが、広過ぎるし観光客は多いし疲れた。
昨日3人行ったのがカプリ島で良かった。

ナポリに戻る。

駅を出るや否や、倒れている女性がいて人だかりができ、警官が何やら連絡している。本当にナポリは嫌だ。

昨日の夜行ったピッツェリアへ行く。大変美味いのだが親父が無愛想で(この人は昨晩、はしゃいでいる僕たちに「少し静かにしてくれ」と言った)僕が入るとあからさまに嫌な顔をし、勘定を頼んでから持ってくるのに10分以上かかった。客はたった3人なのに。
しかもお釣りは小銭だらけ。凄く印象が悪くなった。

鉄道パスが切れているので、乗車券を買ってやっとナポリを離れる。
凄くホッとする。
ほんの10分間駅にいる間にも乞食やら何やらいろんな嫌な目に遭った。
カプリ島は素晴らしいけれど、ナポリにはもう二度と来たくない。

もしたった一人だったら、こんな所に2泊もするのはとても苦痛だったと思う。あの2人に出会えたのは本当に幸運だった。

パレルモがもっとひどいなんて想像もつかない。僕はこの程度で充分だ。
安心したせいかローマまでの2時間半はよく眠った。
緊張の糸が突然ゆるんだのだ。

目覚めると、寝汗すらかいていた。何か変な夢も見た。

テルミニ駅に降りる。最初は結構うんざりしたのに、今となってはローマすら安心できる暖かい街に感じるようになってしまった。

ホテルを探す。1軒目はいっぱいで2軒目は10万リラと高く、3軒目にしてようやく5万リラシャワー付きを見つける。

そう言えば、前は居なかった客引きが駅にもたくさん居た。そろそろ暖かくなってくるし、春休みも本番だ。ローマも刊行に本腰を入れる季節なのだろう、

天井近くにTVまで付いている。僕はイタリアのTVが大好きなので嬉しい。ここに出国までの3泊することにした。これで、もうホテル探しの苦労からは解放されたのだ。

でも、もう移動することもなく新しい街を訪れることもない。
これはちょっと寂しいが、何にしても長い旅だった。東京に帰って、行きつけの辛いラーメン屋にも行きたい。

いつものOsteriaに夕食をとりに行く。もう親父も顔を憶えていてくれた。
同席した卒業旅行の男の子はユナイテッド航空利用で、アメリカでチケットを落としてしまい、大変苦労していた。
相変わらず安い割に美味く、客の8割方は日本人であった。
隣に座った女の子2人は、これからスペインに行くらしく、聞けばホテルが同じだった。

ローマは狭い。まるで修学旅行で来たみたいだ。

スーパーでビールとワインを買ってのみ、眠る。
適当に買ってもワインが美味いのはイタリアの有り難いところだ。


ポンペイの遺跡にて。
後ろには階段状の客席が見えるので、
ここは多分競技場です。


犬のモザイク。
「猛犬注意」と書いてある。
普通の生活があったんだなあと実感。


猫が多い遺跡は多いが、
ここは犬が住み着いた遺跡。


広大な遺跡を望む。
明日からでも何万人も暮らせそうな
大きな一つの街だ。



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