イタリア編 〜


1997年 2月13日(木) ボローニャ:霧 モデナ:霧

知り合った日本人同士でバスに乗り、駅へ向かう。

武蔵野美大の学生は以前リコンファームに失敗したらしく、
アエロフロートのオフィスに電話がつながってとても喜んでいた。

夜にはまた会う彼らと別れ、僕はモデナへ。彼らはサンマリノへ。

以前一度行ったのにまた行くというから、昨日の僕は短に不運に見舞われていただけで、本当は素晴らしい所なのかもしれない。

列車でモデナに着く。すごい霧だ。

ヴェローナは夜だったから分からないけど、今までの霧の中でもかなり濃いほうだ。

気温もちょっと低い。最近は昼間16℃くらいまで上がるのに。

駅を出て歩くと、霧の中から少しずつドゥオーモの鐘塔が姿を現した。

尖塔の先が見えたのは塔の根元まで近付いた時だったから、
この霧は相当深いのだろうと思う。

僕は、お昼前の学生食堂の開店時刻まで街をぶらぶらする。

殆どフェラーリ博物館に行くだけのためにこの街に来たのだが、
なかなか味のある良い街だ。

緑やベンチが多くて、車はそれほどでもない。
石畳の道の上をあるいていると、時々頭上に渡り廊下が横切っている。

ドゥオーモの祭壇には僧服を着た白骨が横たわっていた。
きっと昔の偉い僧侶なのだろう。

ドゥオーモも尖塔もかなり傾いている。
もう少し行けばここも「モデナの斜塔」としてちやほやされたかも知れない。

学生食堂へ。開店したばかりなので食べ物はみんな出来たて。
マカロニとほうれん草とビーフステーキを取る。

2万リラ近くを覚悟したが、何と9600リラ。これは安い。
「学生か?」と訊かれたから、割引価格なのだろう。

ステーキとほうれん草は普通だが、マカロニは熱々で美味い。

この値段でこれだけ満足できる食事は初めてだ。YHの夕食(14,000リラ)より断然いい。
明日も来たいが無理だろう。

ターミナルでフェラーリ本社行きのバスを待つ。ティーンエイジャーがたくさん行き来している。

バスは定刻より10分早く発車した。待合室にいた僕は危うく逃すところだった。

こんなのってひどい。常にチョット遅れるならまだいいけど(良くもないか)。

「地球の歩き方」では博物館まで1時間とあったが、実際は20分チョイだった。
こういうのもひどい。

運転手さんに教えられて降りると、門に黄色い馬のエンブレムのあるフェラーリ本社の
まん前だった。

とりあえず博物館まで歩くが、案の定開館は3時から。

仕方なく、テストコースを見学することにした。

途中、民家の庭にボンネットの潰れた茶色のフェラーリが打ち捨てられていた。
いくら高くても一ぺんぶつけたら鉄屑だ。僕には一生縁のない話だが。

テストコースは広大で、見学者受付もスーベニア・ショップもなく周りは鉄のフェンスで
囲われている。霧の中にぼんやりとシェルやマルボロの看板が見える。

ランチタイムの後なので、当然の事ながら車なんで走っていない。

言われなければただのアウトストラーダ(高速道路)に見えただろう。

赤いフェラーリのつなぎを着たエンジニアが、フィアットのバンに乗って通った。
車体には、でかでかと「Ferrari」と書いてある。
自社ではバンもトラックも作っていないのだろう。ちょっと笑えた。

近くのバールで美味いレモンソーダを飲んで開館時刻を待つ。

3時になってF1のゲートのような入り口のランプが赤から青に変わり、
何人か待っていた観光客が入場する。

館内は2層になっていて、1階は歴代の名車、2階はフォーミュラカーだ。
何と、モーターボートまである。F40、F50、ディーノを見た。感動。

再現されたエンツォ・フェラーリのオフィス。
ジャン・アレジのハンドル、ニキ・ラウダのヘルメットなどがある。

かけがえのない車ばかりなのに、ロープなどで囲わず首を突っ込んで細部まで
見られるところが凄い。

撮影もOKだ。同じ12,000リラだが、マントヴァの宮殿とは大違い。
とても楽しんだ。

バスを待っていると、遠くから轟音が聞こえてきた。
急いでサーキットに駆けつけると、幸運にもF1カーのテストドライブをやっていた。

生まれて初めて見る。ものすごいスピード。

遠くから変なタイミングで反射音が返って来る。
マフラーからは火が出ていた。

日の暮れかかったサーキットを、ぎりぎり目で追えるくらいのスピードで走る
フォーミュラカー。

わざわざこんな不便なところまで来た甲斐があった。

バス停で会った日本人はヴェネツィアへ急いでおり、
バスを待たずタクシーで駅へ向かった。

僕はお金がもったいないので誘われたけど便乗しなかった。
しかし結局、バスに乗って駅に着くと彼に再会した。

YHではまたしても夕食を作ってもらえず。念のために買っておいたパンで腹を満たす。
味気ない事この上ない。

夜、武蔵野美術大の学生にフェラーリ博物館の話しをすると大変興味を持ち、
予定を変更して明日行く事にすると言った。

早くから寝ている男がいてベッドで読書はできず、10時過ぎに眠る。


フェラーリ本社。
右の柱には馬のエンブレム。


創始者エンツォの、亡くなった息子
の名を冠したDino(ディーノ)。


往年のフォーミュラ・カー。
『ルパン三世』に出てきそうだ。

二層になった、博物館内部。


非常に珍しい、フェラーリのモーターボート。
昔のSF漫画の乗り物みたいだ。


『こち亀』で中川君が良く乗っているF40。
後ろはF50(今日始めて知った車)。

それぞれ、フェラーリ40周年と
50周年の時に造られた。


爆音を残しながら疾走する青いフォーミュラカー。



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