何はともあれ20代最初の朝だ。 夜中に喉が渇いて目覚め、ボトルの水が切れていたので、外に出ようとしたら鉄格子がはまっていて出られなかった。 でも、良く考えてみたら出られたとしてもコンビニがあるわけではない。 中庭には珍しく自動販売機があったので、トニックウォーターを飲んだ。 ふと上を見上げたら、星空がとても綺麗だった。 流れ星も見えた。 午後2時43分発のマドリード行きを待つ。 僕の叔父さんは若い頃、「マドリード」という名の異国的な響きに憧れたそうだ。 その後いろいろな地を踏み、今は旅行業を営んでいる。 今日は日曜日だからコルドバに居ようがマドリードに居ようが、するべきことは何もない。 日本のシステムが懐かしい。 土日に休みなのは官庁くらいでいいと思う。 駅までの道はきれいサッパリ何も開いていない。 閉店中のハンバーガー屋なんて、そう何度も見たことはない。 スペインの新幹線AVEは、とても快適。 同じスペイン国鉄の列車とは信じられない。 速いし静かだし、言うこと無し。 マドリードのアトーチャ駅は、なぜか熱帯植物園のようだった。 駅の案内所で宿を探してもらった。 日曜日ということもあって、街は死んだように静か。 風景はパリとさして変わらない。ここはもう大都会だ。 スペインとも明日でお別れ。 バルセロナに来たのがちょうど一週間前だから、今回の旅で一番長くいた国ということになる。 一番楽しかったような、一番苦しかったような奇妙な印象が残る。 何はともあれ、このスペイン時間と無責任さだけはたまらない。 ずいぶん泣かされたものだ。 腹が減っても開いているレストランは見つからず、食えるうちにと食いすぎればお腹を壊す。 チケットの払い戻しは出来ないしおつりは誤魔化す。 ろくな物じゃないが、腹の底からは嫌いになれないでいる。不思議なものだ。 夕食をとりに行くが胃が参っていて殆ど食えず。 宿に戻ってとにかく眠る。 誕生日だというのに、何だか滅茶苦茶に疲れている。 旅は、終わりに近づいている。 |