イギリス編 〜




1999年9月5日(日)
ロンドン:晴れ

深く眠った上に耳栓をしていたので、目覚ましのアラームには全く気づかなかった。
隣のベッドに寝ていた神戸の大学生と一緒に階下に降りて朝食。食堂には、すでに行列が出来ていた。
気持ち良く晴れている。空気はさわやかに澄んでいて、夏の終わりとは言え太陽は豊かに降り注いでいる。
僕は動物園や博物館などを巡るつもりだが、彼は今日オックスフォードへ行くそうなので、デイバッグを持ってパディントン駅まで一緒に行く。
日曜日なので殆どの店は閉まっている。
パディントン駅の雑踏の中、ばったり職場の先輩に会った。
ソウルの空港でも別の人と偶然会ったので、世界は広いようで狭いらしい。

神戸の彼に別れを告げ、僕はベイカーストリートを目指す。リージェントパークのロンドン動物園に行きたいのだ。シャーロック・ホームズ所縁の地を巡るのではない。この探偵は明智小五郎と違って、僕の好みではないのだ。
ベイカーストリートの駅のタイルはホームズの絵で飾られており、通りに出るとホームズ・パブが有った。

リージェントパークは想像を絶する広さで、テニスクラブや広大な芝生などがどこまでも続く。強い日差しのせいもあって公園の逆側にある動物園に着いた頃にはすでにヘナヘナだった。

入り口が近づくと、塀越しにハイエナやポニーが見えた。
中は、多摩動物公園に勝るとも劣らない広さと動物の数で、僕はすっかり圧倒されてしまった。名前と姿は知っていたけど実際には見たことのないオカピや手の平に乗ってしまう程の猿ピグミーマモットセット、そしてなかなか見られないゴリラの姿には魅入ってしまった。

出てきた時には足が棒のようで、芝生にへたり込んでしまった。仰向けに寝転んで青い空を仰ぐ。
家族連れや犬を飼っている人、ガーデンパーティーを楽しむ人など過ごし方は様々だ。

オックスフォードサーカスに向かう途中で、エントランスに万国旗を並べたでかいホテルからウェディングドレスを着た日本人女性とその家族が出てきた。ハワイは良く聞くが、ロンドンの真ん中ってのは珍しい。花婿の姿は見えなかったが、あるいはイギリスの人なのかもしれない。

ナイツブリッジの自然史博物館へ。
17時以降は無料なので本当はハロッズデパートで時間をつぶしてから来たかったのだが、ハロッズが休みだったので仕方なく料金を払って入ったのだが、これが大当たりだった。

僕好きな恐竜・鯨・その他巨大獣の骨・模型・剥製が目白押し。
巨大アルマジロや太古のイルカ型爬虫類など見たこともないものばかり。無料タイムだけでは、とても見切れなかっただろう。

地球館では阪神大震災の揺れを体験するコーナーもあったが、どうも現実には及んでいない気がした。日本の雰囲気を出そうとしてかかっている音楽も明らかに中国のものだし、この程度の揺れなら僕も小学校のころに東京で体験した事がある。想像で作っていたり手加減をしているなら展示の意味がない。実際の震災はこんなものではなかったはずだ。

しかし、なかなか見ごたえのある博物館だった。
いつも思うのだが、美術館や図書館などは施設の規模と蒐集力でその魅力は大きく違うので都会に住んでいるということは大きな魅力だ。僕も小さい頃に上野の科学博物館や美術館などに気軽に行けたのはとても幸運だったと思う。
それと引き換えに自然の魅力は大人になるまで知らなかったし広々とした生活環境はなかったわけだが、両方は得られないので仕方がない。

昨日のスーパーで夕食の買い物をして、YHで自炊。
キャンベルの缶スープにはたくさんの種類があり、野菜やパスタ入りのものもある。どれも美味しく、腹の空き具合いと好みによって選べるのでイギリスの旅では強い味方だ。

歩き疲れたので、9時前に眠ってしまった。


翌日にほんの少しだけ寄った
大英博物館。

高校のときにイギリスを目指した一つの要因は、
当時NHKで毎晩のようにやっていた
この博物館の博物館の展示品を
紹介する特別番組だった。

歴史の教科書で年号を覚えるより
遥かにダイレクトに世界を感じる事が出来た。

その多くは支配と略奪によって
ここに運ばれたものだから
本来あるべき場所ではないのだが。



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