イギリス編 〜


1999年9月7日(火)
バース・ソールズベリ:曇りのち晴れ

早起きして朝食。
ストーンヘンジ行きツアーバスの予約がないので、少しでも早く街に下りて策を講じなければならない。

昨日までの暑さが嘘のように冷え込んでいる。僕はフリースの上にジャケットを着て街へ下りる。
昨日バスが上ったのは曲がりくねった車道だが、それを横切る階段や細い道などの急な坂道を急ぐ。

昨日目をつけていたツアーの集合場所で、予約した日本人の女の子2人と中国系の中年女性がバスを待っていた。聞いてみると、集合時刻を過ぎているのにバスが表れないのだと言う。

僕はチケットを借りてツアーオフィスに電話をしてみた。
すると、何とバスが途中故障して今日のツアーは中止だと言う。
そこで急遽、僕たちは4人で列車と路線バスによるストーンヘンジツアーを組んだ。

日本人2人はNOVAの留学プログラムでバースにホームステイ中とのこと。
もう一人の方は中国系オーストラリア人でバース大学に化学を教えに来ている大学教授であった。名前はルーさんと言う。

1時間ほど列車に揺られ、ストーンヘンジ行き路線バスの出るソールズベリへ。
成り行きで来た街だが、街並みといい商店の店構えといいとても美しく、通りすぎるには惜しい。夕方ゆっくり見ることにしよう。

バスは赤いダブルデッカーで、僕たちは2階の先頭に陣取った。
途中雨が降ったり雲行きが怪しくなってヒヤヒヤしたが、いつしか気持ち良く晴れた。

ふと広々とした平原の前方を見ると遥か遠くに、しかしはっきりとあの巨石群が見えた。近づくに連れ、訪れた人々との対比でその巨大さが分かるようになった。
いったい誰がどのようにして、何の目的でこんな物を建てたのだろうか。

入場料を払っても柵越えに遠巻きにしか見られず、触れることはできない。
日本語のガイドが聞ける機会を借りた。やはりここは天文台だったという説が一番うなづける。
それにしてもわざわざ石に突起と穴を作って組み合わせ、こんな巨大な物を作る必要がどこにあったのだろう。

ストーンヘンジは、辺り一面羊しか居ない平原に建っていて、大地と空の広さを肌で感じられる。古代人はここで何をしたかったのだろうか?

設けられたベンチで、僕たちは朝買っておいたパンで昼食をとった。ソールズベリの何でもないベイカーで買ったのだが、とても美味かった。

巨大な暗雲が太陽を覆い、やがて風に流されて再び日が降り注いだ。

羊たちは黙々と草を食んでいる。

帰りのバスは思ったより速かった。
ソールズベリ駅前で急ぎのルー女史と別れを告げ、僕たち3人は大聖堂を観に行った。
かなり遠くからでも分かったその高さはやはり相当なもので、何と下から塔を見上げる望遠鏡まで設置されていた。
3£の入場料をケチって諦めた僕はここで2人にも別れを告げ、ソールズベリの街を一人で歩いた。小さな教会の裏にある広場には市が立っていて、服や雑貨、ペット用品など様々な物が売っていた。

小川には白鳥が泳いでいて、水面は夏の陽に揺らいでいる。
僕は、実にゆったりとした気持ちになることができた。

列車でバースに戻り、この街の名から風呂の語源にもなった温泉の遺跡へ。
遺跡とは言えなかなか豪華で、ローマ時代の姿を殆どそのまま想像できた。目を凝らせば古代の人々が入浴する姿が見えるようだ。
ところで僕は、ここで入浴できるものだと勘違いして水泳パンツを持ってきてしまった。

この話は旅の間じゅう、誰に話しても笑われた。

水飲み場に湧き出ている、温泉の水を飲んだ。温水プールより少し暖かく、含有ミネラルのせいか石を舐めているような味がしたが、体には良いらしい。

僕は夕暮れのバースの街を気持ち良く歩き、スーパーでパスタとスープを買った。

YHに戻って調理を始めると、何か懐かしい香りがした。ふと見ると、すらりと背の高い日本人の女の子がお茶を淹れている。
話してみると、彼女はこれからリーズに一年間留学するという関西の大学生だった。

僕は多過ぎるパスタを彼女と分け合い、いろいろな話をした。
実に良く笑う人で、とても楽しい時間を過ごした。
僕がスーパーで買った2種類のビールを一緒に飲み、さらに話は続く。

丘の上のYHなので街の夜景を見ようと外に出ると、中庭には満天の星空が広がっていた。
僕たちがポーチを降りて空を見上げるとすぐに、今までに見たこともないくらい長く明るい流星が横切った。

夜は暗くてひんやりとしており、僕たちは取ってきたシャツを着て歩く。
隣の家の庭からは、灯りが少ないせいでさらにはっきりと星が見えた。

通りを渡って向かいの家の巨大な裏庭に忍び込む。
街の灯りはオレンジ色で優しく、遠くまで広がっている。

冷たく澄んだ空気の中、星空を見上げていろんな話をした。
彼女は星に詳しくて、夏の星座について教えてくれた。そして、異国で学ぶことの不安をそっと打ち明けてくれた。

短い夏が過ぎ去り、ここにはもう冬が近づいている。

それぞれの部屋に戻って就寝。
明日は、早い時間にここを出てコーンウォールへ向かうつもり。


ストーンヘンジ。
何だか小さく見えますが、
実際はデカイです。


雨降りの合間に、光が差しました。
やっぱりこの巨石群は
空を見るためのものだと思いました。


ピンボケも甚だしいですが、
即席ツアーの4名。


ローマ風呂の遺跡。

バカな僕は、このバッグの中に
海パンを忍ばせています。



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