その1 フリーマーケットをやって来ました。

2001年 12月 15日(土)
 明治公園:晴れ

 朝6時に起床。
 とても寒いが、晴れそうで良かった。
 今日は7,8年ぶりくらいにフリーマーケットをやるのだ。

 目的はいろいろあって、衝動買いやら何やらで増えた要ら
ない物を片付けて部屋を広くしたいのが一つ。
 もう一つの目的は、ただ単に友達とお店気分を味わいたい
のだ。儲けはあまり期待していないが、3万円くらいになれば
とっても嬉しい。

 前回(1993年頃)やった時の会場は高島平団地で、客層
は主婦や家族連ればかりだったけど、「こんな物、本当に要
るか?」と思うようなものまで結構売れた。
 中学の時に着てた黒いGジャンを、20歳くらいのモデルの
ような女性が買ってくれた。すると、僕にとってはもう「終わっ
ていた」その服が、全然違う表情を見せたのだ。「お!カッコ
いい。」と思ってしまった(たまたま着た人が良かったのかも
知れないが)。
 あの服にとっても、僕のタンスで埋もれているより、その日
からのSecond Hand(中古品)ライフの方が良いだろう。
 まさに、「捨てる神あれば拾う神あり」。だからフリマは楽し
いのだ。

 ワゴンに積めるだけ荷物を積んだら、夜逃げのようになって
しまった。中身は洋服、アウトドア用品、古い二眼レフカメラ、
時計、楽器などなど。
 朝早い街を走り、友人T君とYさんを拾う。T君は絵を書くの
が趣味で、今日はその絵を展示、販売する。Yさんは服やバ
ッグなどをカバン二つ分積み込んだ。
「売っちゃっていいの!?」と思うようないい物ばかり。女の子
ものが並ぶ事で、僕達の店はバリエーション豊かになった。

 工事渋滞を抜け、明治公園に着いた時にはすでに会場は
大賑わいだった。
 インターネットで予約した証明書を見せて、係のお兄さんに
誘導してもらう。車の大小で場所が違うらしく、僕のワゴンは
大きくて端っこには入れてもらえなかった。
 そのかわり通路に面した日当たりの良い最高の場所が偶
然あてがわれた。嬉しい。皆、隣の店との境界線ギリギリで
商売している中、広々と使える。

 まずは会場を一回り。すでに売る人・買う人で一杯だ。
 そんな中の一店にふと目をやると、探していた黒いB-3
(ムートンの革ジャン)が売っているではないか。バイクに乗
る僕にとって、これこそ理想の革ジャンなのだ。
 すでに年配の男性が交渉中だった。しかし、彼にはサイズ
がやや大きいようだ。「売れるな、売れるな!」と背後から
祈り、ようやく諦めたところで試着させてもらう。
ピッタリだ。値札は1万2千円。
 Avirexなどのメーカー品を普通に買えば7,8万円はする
この革ジャン。ノーブランドの中古でも、この値段は安い。
しかし、フリマに交渉はつきものだ。店主のおばちゃんとかけ
引きが始まる。うっかり「お兄さん、似合うねえ。」なんて言っ
てしまった彼女との長いやり取りの結果、ジャスト1万円で
交渉成立。大満足で2人と合流する。
 あんなに「部屋を広くしたい」と言っていたのに、早速荷物
を増やしている僕を見て彼らは苦笑した。

 ワゴンのハッチを開けると、早速背後から声がかかる。
「そのフライロッド、いくら!?」これはブラッド・ピットの映画
「River runs through it」に憧れて買ったものの、広い川に
行く機会がなくて一回しか使わずに埋もれていたものだ。
早速、フライ(毛鉤)10個つき3000円で交渉成立。
 嬉しい気分でハンガーを組み立てて洋服を吊るしている
そばから、今度は「このレザーコートいくら?」との声。

 そんなこんなで、まだ店の体裁も整わないうちに、どんどん
売れていく。品物を並べてから、座ってゆっくり値段を考えよ
うと思っていたが、甘かったようだ。結局2時間くらいはアッ
という間に過ぎ、ようやく落ち着いた時は既にお昼だった。
 寒さを警戒していたものの、あまりの日当たりの良さと忙し
さで、いい汗すらかいてしまった。でも、準備したキャンプ用
ガスバーナーでお湯を沸かして食べたカップヌードルは美味
しかった。やっぱり、冬は暖かいものが嬉しい。
このバーナーも、午後には売り物だ。

 僕達が座っていた木製のベンチが突然売れて、それ以後
は直接車の荷台に座ることになった。
 アジアのどこかの国の大使の家族らしい親子連れが、ゴム
ボート(ポンプつき)を300円まで値切って買ってくれた。

 ふと、ミニアンプに目をとめたおじさんが「これいくら?」と訊
いてきた。それはギターの試奏用で、売り物じゃないと言うと、
「え!ギターあるなら見せてよ。」と言ってきた。
 そう言えばギターを後部座席に残したまま出し忘れていた。
黒いハードケースに入ったそのギターは、僕が18歳の時に
初めて自分で買ったGRECOのレスポール・タイプ。12万円
のところを6万円で買った。僕にとっては思い出の品だ。
「お、良いねえ。頂戴よ。いくら?」と乗り気のおじさん。
僕は儲けもあまり考えず、1万円で買ったハードケースにさっ
きのミニアンプやギタースタンドなどいろいろつけて3万円で
売った。値切り交渉はナシ。この人は、きっと大切にしてくれ
るだろう。中古屋じゃそんな値で買ってくれないし。
「いやあ、ピカピカだねえ。」の言葉にショック。もう8年も使っ
ているのだが。やはり練習していなかったのだろう。このギタ
ーにとっては、今日が本当の人生のスタートなのかも知れ
ない。
 長い事ほっといてゴメン。でも今まで本当にありがとう!

 「軍曹旅日記」のヨーロッパ・イタリア・イギリス・マレー編を
一緒に旅したカバンも今回並べた。名残惜しいが、僕はもう
旅慣れて、ここまで大きなカバンは要らなくなったのだ。
 いろいろな人が手に取ったが、75リットルはさすがに大き
すぎるのか、皆考え込む。その度に僕は内心、どこかで
「売れるな、売れるな!」と祈っていた。僕にとっては、苦楽
を共にした戦友同然。手放すのは、やはり寂しいのだ。
 すると、隣に座っていたYさんが「私、欲しいな。」と言った。
よく海外旅行をする彼女は、こんなカバンが欲しかったそ
うだ。それは嬉しい!僕は喜んで一気に1000円まで値下
げして売った。友達だからタダでも良いのだが、それでは
意味がない。

 そうこうしている内にアッという間に3時になった。
 もう終わりの時間だ。周りの店は投げ売り同然の値引き
を始める。僕は次に使う人にも大事にして欲しいので、この
時点で売れなかったものは持って帰ることにした。

 しかし、本当に楽しい一日だった。
 売上は、何と9万円ちょっとになった。大満足。しかしこの
数年の内に、買値はその何倍もの買い物をしていたのだ。

 これからは、「絶対売りたくない!」と思えるものだけを買う
ように心がけよう。でも、フリマはただそれ自体楽しいから、
いつか是非またやりたいと思う。
中学からの友達、T君とYさん。
一緒に子供や中高生とキャンプする仲間です。
二眼レフカメラを手に満面の笑顔の私。
売り物の数々。左端が「軍曹旅日記」で
お馴染みの大きい3ウェイバッグ。
冬の屋外なので、昼食はお湯を沸かして
カップ麺。大正解でした。
 服が結構売れました。売れ線は
レザーとツイードジャケットです。
片付け済んでの一枚。予想以上に
楽しい一日でした。
上の写真撮影直後なのに、もう日が沈んだ
のが分かる。急に寒くなった。


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